ラカイン プロジェクトとGUCセンターが始まったわけ

                

<言えなかったひとこと>

                                   
ダッカ市街を出るなりバスは闇の中で、命知らずのチキンレースを繰り広げる。
手のひらからは、じとーっと汗がでる。窓など見ずに、ひたすら横になって目
を閉じるか、アラーの神にでも祈るしかない。
                                   
ここはバングラデッシュ。僕と妻の磨祐は、十時間の道行き、コックスバザール
に向かっていた。
コックスバザールは、イスラム教国バングラデッシュの中の少数民族、仏教徒
ラカイン族の住む所である。国の人口一億二千万の中で、彼らは二万人しかい
ない。
                                   
僕たちが三年前から、毎年コックスバザールに行くようになったきっかけを話
してみよう。
                                   
それは、彼らに“言えなかったひとこと”があったからである。
というのは、こんな話である。
                                   
若くしてマラリアのため命を失くした森さんというカメラマンがいた。
彼は、ラカイン族の存在を世界に紹介しようとしていた。
                                   
彼の葬式で集まった香典300万円を元に、ラカインの小学校を再建する話が
持ち上がった。その後、お金を預かった旅行作家の下川裕治氏が、生前、森さ
んが親しかったラカインの家族を訪ねていく。
                                   
その家族は、下川氏が希望する宿に連れて行ってくれ、何くれとなく世話をし
てくれる。
それで最後に、良かったら家に来ないかと、遠慮がちに誘う。
                                   
行ってみると、大ごちそうが用意してあり、一族の大歓待にびっくりする。
                                   
その後、相当の時間がたってから、“良かったら泊まっていかないか?”と、
またしても遠慮がちに言うのである。
これだけのごちそうなら、昨夜から準備していたかも知れない。きっと部屋だ
って、最初から用意してあったに違いない。
                                   
それなら一体、なぜ彼らは、迎えに来た時にそう言わなかったのだろう?下川
氏は不思議に思う。しかし、部屋のベッドで気づくのである。
“そうか、言えなかったんだな”、と、、、。

                                   

<そして現在に至る>

                                   
僕は、思わず心の中でつぶやいてしまった。
“あるんだよなぁ、そういうことって。うーん、わかるよなぁ。その時の言え
ない気持ちって、、、”と。
                                   
しかしそれは、インド、バングラデッシュの人に対する僕のイメージとは、お
よそ全くかけ離れたものだった。
僕のイメージでは、彼らは皆、遠慮のかけらもない。はなはだ自己主張が強い。
人の生存が厳しいためか、皆、押し合いへし合いで生きているというものである。
                                   
というのは、インドは三回、数ヶ月ほど旅したが、ラカインの人と同じく言え
ない日本人の僕は、いつも、したたかなインド人に、してやられてばかりだっ
たのだ。
                                   
“そんな遠慮呵責のない精神風土で「遠慮がちで言えない」心を持つ少数民族
がいたのか、、、。イスラム教国に生きる仏教徒が、差別を受けながら暮らし
ているのか、、、。”と、僕は驚くと共に、その“言えなかったひとこと”の
エピソードに、いたく共感してしまったのである。
                                   
おりしもスリランカの井戸の建設や、その他のプロジェクトが一段落したGUC
(グローバル・ユニ・コミュニティ)は、新たな支援先を探していた時である。
そして僕は、先のエピソードを読んだ数ヶ月後には、コックスバザールにいた。
そして、下川さんを通じて、先のラカインの家族、ラジョーさんと会った。
                                   
ラジョーさんは、とても愉快な人だった。飾りがなく、気楽につき合うことが
できる人である。そして、ラカインの子供たちの将来を、本気で心配している。
                                   
そんな彼と一緒に、支援候補地の小学校がある村々を回ったのが三年前のことだ。
                                   
こうしてGUCは、現在、全部で3つの小学校や孤児院を支援している。

                                   

<GUCの支援目的>

                                   
バスの十時間の全力疾走と、アラーの神のおかげ(?)で、深夜のコックスバ
ザールに着いた。ラジョーさんは起きて待っていてくれた。
                                   
翌朝から、さっそくミーティング。五日間の過密スケジュールを組む。
簡単にざっと上げると、村々や学校の視察や、島の女性達と工芸品ミーティン
グ、仏舎利塔の改修工事の相談、GUCラカインセンター候補地の決定等々である。
                                   
さて、今後、このプロジェクトをどう進めていくか?
                                   
彼らが、将来収入の10%をラカインの子供たちの教育支援に回すようなシス
テムを造る。
                                   
将来は、全部で22ある村の小学校を開校させたい。(現在開校しているのは
4つのみ)また、優秀な学生には、奨学金を出して海外留学させたい。
また、仏教を保護し、さらにバングラデッシュにおけるラカインの地位向上を
目指すこともある。そして、できれば大乗仏教、念佛も広めたい。

                                   

<ラカインGUCセンターを創ろう!>

                                   
で、そのためには、何をするのか?
ラカインGUC自体が収入を得られるような、ビジネスを打ち出していかなけ
ればならない。たくさんのアイデアがある。が、まずは、ネットカフェ併設の
GUCラカインセンターを造ることになった。
                                   
候補地は、ラカイン仏教福祉会館。十五畳ほどの部屋の増設費用は100万円。
(←おいおい、お金はどう工面すんだよ。→しかし造ってしまえば家賃は不要
だしな、、)
                                   
このセンターには、いくつかの機能をもたせる。ネットカフェだけでなく、小
さな図書館やミーティングスペース等々。(ラジョー氏曰く、念佛スペースも
造りたいとのこと)
                                   
ラカインGUCメンバーになった人は、ネットカフェ代が割引になったり、図書
館で本を借りることができる。その他、特典をつける。
会費やネットカフェの収入は、GUCラカインの収入として、新たな村の教育支援
に回していくことができる。
                                   
将来は、全ラカインの人が寄付のシステムに参加していくことで、次世代のラ
カインの教育環境は、多くの小学校が廃校になっている現在よりも、はるかに
充実していくはずだ。
                                   
しかし、その前に、ラカイン仏教委員会の会議での賛同を得なければならない。
ということで、ラジョーさんと僕らで持参したウイスキーを、会長や副会長な
どに飲ませるという、根回しの説得工作の二晩もあった。ふぅ、支援活動も楽
ではない。
                                   
                                   
実は、増設費用が100万円と聞いた時、“そういえば、候補として上がって
いる浄土宗平和賞の賞金が、50万円だったなあ、、。もしそれがもらえたら、
あと50万円たせば、ラカインGUCセンターができるなあ、、、”とつい、取ら
ぬ狸の皮算用をしてしまった。(汗)
                                   
まあ、“人の懐なんかあてにしていないで、がんばって自助努力を!”と、自
らを戒めつつ、再び、十時間かけてダッカに向かう全力疾走のバスの中に身を
横たえたのだった。二人ともに、6ヶ月に感じた6日間の日々だった。
                                   
                                   
                                   
文/遠藤喨及
                                   

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                                   
以上は、ラカイン族支援プロジェクトが発足した経緯から、2010年2月にGUCラ
カインセンター建設計画が立ち上がるまでの話です。
                                   
その後、タオサンガ/インターナショナル運営委員会において、このプロジェ
クトは承認され、各国の支援分担などが話し合いの上、決まりました。
                                   
そしてセンターの建設は、2010年6月に工事が始まり10月に完成。10月26日に
オープニングセレモニーが行なわれました。
                                   
GUCの支援の目的は、単なる金銭的な援助にとどまらず、ラカインの人々自身が
自立した経済システムを確立できるようにバックアップするというものです。
そしてセンターの建設は、そのためのものであり、またラカインと世界をつな
げるためにあります。
                                   
人の可能性は無限です。私たちは、人々が互いに貢献し合うことができる世界
を創ることできると信じています。
そしてラカインが、その一歩を踏み出すための手助けができることを、嬉しく
思います。
                                   
                                   
プロジェクトの詳しくはこちらをご覧ください。
         ↓
http://www.npouni.net/aid/bangladesh-aid/
                                   
                                   
                                   

                                   
                                   
                                   
                                   
                                   
                                   
                                   
                                   
                                    
                                   
                                  
                                   
                                   

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