退屈なフリー・ウェイ
カナダを横断するフリー・ウェイを、トランス・カナダ・ハイウェイといいます。
これはまさに東西をはじからはじまでをつなぐ高速道路で、全長は7,800km、
時差は4時間だったと思います。
時折、モントリオールからトロントへ向かうときに、これに乗って一気に走ります。
モントリオール、トロント間は、6時間ほどで着くのですが、その間の退屈なこ
とといったら、、。
森林の中をほとんどまっすぐ、時に適当に曲がりながら、ただ景色が「ほらよっ」
という感じで過ぎて行くだけです。
花も、実もありゃあしません。
そこで、ちょっとだけ一息入れられるのはサービス・エリアですが、利用して
いるのは、ほとんどが長距離トラック運転手です。
ファスト・フードのラインに並んでいても、前後ともやや太め、またはかなり
太めで無精ひげ、スウェット・パンツが、尻の割れ目が見えるぞ、というほど
のところでやっと止まっているような、見るからにトラック野郎ばっかり。
なんかやばいな、刑務所の昼時かな、という雰囲気です。
思いがけない再会?
昔、馬の調教をしていたときにアシスタントで乗ってもらった、マリー・アン
ドレという女の子がいた。
この子は、ポッチャリで中背、素直な顔立ちで、冬に見ると肌あくまで透き通
るように白く、ブロンドをいつもポニー・テールにしていた。
スイスイとよく動き、気が利いて優秀な子であった。
あるとき、こういうサービス・エリアで、彼女に再会、、?
おやめずらしい、まさかこんなとこで会うとは、と、まさに声をかけるか、と
いうところで人違いだと気がついて、おっと、土俵際寸止め、となったわけです。
考えてみれば、15年くらいも前のこと、マリーは当時20か21歳で、いまだと35歳
くらいになっているはずで、目の前の子のように若いはずもありません。
これが数十年前なら、間違ってこれ幸いと、もっと別の花の展開があったかも
しれませんが、私は止まってしまった・・。
そして、ブラックね、と言ったのににミルクを入れられてしまったコーヒーを持って、
退屈な旅を続けようとサービス・エリアを出たのでした。
黄色いトラックの運転手
それからしばらく走り、ミルク入りコーヒーが冷める頃、ふとミラーを見ると
トラックがぴたりと後ろについている。
スピード・メーターを見ると115km、特にトロいわけでもない。
なるほど前の車からは距離はあるけれども、スピードは大体同じで、追い越し
車線にいても文句をつけられるような走りではない。
かといって、パッシングを浴びせるとかいうことでもない。
どうすんだよ、お前、と、こっちも何せ退屈ですから、ちょっと付き合ってい
ると、トラックはするりと右側へ出て、走行車線から追い越しにかかります。
黄色いトラックでベッドも付いているフル装備の超長距離対応仕様です。
そいつがだんだん抜いてゆき、運転席をふと見上げると、そこには、あの、マ
リー・アンドレ似の女の子が窓を全開にして軽くひじを乗せ、ブロンドをなび
かせて、はるか前方を眺めていました。
そしてそのまま53フィートのトレーラーを引っ張って抜いてゆきました。
ナンバーは、と見ると“Alberta ”と、ありました。
*Alberta:アルバータ州、トロントから西へ2500km。時差は3時間。
私はなぜかなんとなく気分が高揚してきて、嬉しくなり、さて、あとどのくら
いでトロントかな、と思ったのでした。
文/豊田悠貴
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