エッセイ タオ指圧が結ぶ心 ―イタリアで出会った子供達―

イタリアの現在

今年は、イタリア統一150年ということで、いろいろな記念行事が行われて
います。世界でも遺産の多い国として有名なイタリアが、共和国として誕生して
まだ150年しかたっていないというのは、ちょっと意外な感じですが・・・。

イタリア人は、自分の故郷を大切にする気持ちが強く、イタリア人というより、
むしろミラノ人、ローマ人、シチリア人などと呼ぶことの方が多いのです。
そんな中で、イタリアから北部を独立させようという意見を持っている政党も
あります。
というのも、イタリアの北部と南部では、同じイタリア人でありながら、風土・
性格に大きな違いがあるのです。勤勉で経済的にも豊かな北、失業率も高く、
貧しいけれど、良く言えばのんびり暮らしている南。EU圏でお荷物的な存在
のイタリアの中で、その足を引っ張っているのがローマ以南のイタリアという
わけです。そんなお荷物はさっさと切り捨ててしまえという意見があるのです。

サレルノでタオ指圧を紹介

サレルノの市長さんの呼びかけで、文化も就職先もないような南イタリアに
なんとか新たな息吹を吹き込もうと『Sudsalus 2011』という、バイオやエコ、
代替医療の紹介を行うイベントが開催されました。
※sud は南、salus はラテン語で健康という意味。

その第一回目に、タオ指圧も参加することになりました。
イタリア以外に、タイ、インド、日本の参加が予定されていたのですが、都合
で具体的に参加したのは日本だけでした。指圧以外の日本文化も、ということ
で書道の紹介、実演もさせていただきました。

実は、私自身、南イタリアを訪れたことはあまりありませんでした。
“危険だから”と、多くの友人(イタリア人)から聞いていたからです。
ですから、そこに住む人々と身近に話すこともありませんでした。
街の印象は、ちょっとホコリぽくて、これといって魅力的な場所もなく、2階
建ての建物が並ぶ、ちょっとアラブの国を思わせるものでした。通りには、
圧倒的に若い男の子が多く、ローマでもあまり見かけたことのない風景でした。

10月1、2日に行われた此のフェスタには、市長さんが、小・中学校の子供達を
招待してくれました。大人だけが興味を持っていてくれるのかと思いきや、
指圧や書道を全く知らない彼らが、とても興味を持ち、たくさんの子供達が
タオ指圧を受けてくれました。

狭いタオ指圧のテントはいつも満員でした。
隣の、倍の大きさのテントで行われている別の指圧を受けようとはせず、自分
の順番を辛抱強く待っていてくれました。
「彼らは何かを求めて居るんだ。」「怠けているのではなく、目的が見つから
ないのかもしれない。」
わたしは初めて彼らのちょとした生意気な態度の中に潜む、懸命な思い、何かを
知りたいという願いを、垣間見たような気がしました。
それはちょうど、砂漠の乾燥した砂が、たくさんの水を欲しがっているような、
そんなせっぱ詰まった眼差しでした。私にも何かできるかもしれない、彼らの
ために。そんな勇気をくれた眼差しでした。

筆者の言葉に耳を傾ける子供たち サレルノ

                                   

ローマの日本人学校のバザーで

サレルノのイベントから1週間後。
今度は、日本人学校のバザーです。学校の経営援助のために、年に1度おこな
われるボランティア。焼きそば、カレー、普段ちょっと口にできない焼き鳥、
いなり寿司、たこ焼きなどの食べ物屋、着なくなった衣類、読んでしまった本
などを売る店でにぎわいます。保護者だけでなく、生徒達も喜んで参加してく
れます。

ローマ 日本人学校で

そんなザワザワした体育館の中で、タオ指圧メンバーは脇目もふらず、せっせと
予約をしてくれた人々の治療をしていました。
少しでも指圧に親しんでもらおうと設けた”親子で指圧コーナー”では、勇気を
奮い起こして、6年生の男の子T君が、指圧を受けてくれました。その後、
イタリア人の家族が通りかかり、T君と同い年くらいの男の子が興味深そうに
見入っていました。早速声をかけて、二人に試してもらいました。T君がとなり
で指圧をするメンバーを真似ながら、その男の子に指圧をしました。胸のドキドキ
が聞こえるほどに緊張していた“指圧師”は、それでも“患者”の、「気持ちが
良いよ」という言葉に、ほっとしたようでした。終わって、“患者”の少年は、
“指圧師”に握手を求めます。緊張と誇らしい気持ちが一緒になった、なんとも
言えない笑顔でそれに応えたT君でした。

二つのイベントを終えて

此の小さな二回の経験で、どちらも子供達の姿が私の心をとらえました。
大勢押しかけてくれたサレルノの子供達の中には、タオ指圧を受けて、今まで
に経験したことのない程の安らぎと愛情を感じ、母親を連れて戻ってきてくれた
女の子もいました。
子供は、心が素直で傷つきやすいだけに、暖かさや思いやりを感じる心も豊か
なのですね。
大切なことを学び、豊かな心を未来へ伝えていく大きな責任があるということを、
心に結んだ日々でした。

文/三浦絹子(ローマ在住)

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