―サンレモ音楽祭で感じた、イタリアの心意気― 

春が近づいてきたこの季節、イタリアでは毎年、サンレモ音楽祭が開催され、
5日間(今年は2月15から19日まで)音楽一色に染まります。

イタリア国民は、毎年TVで、サンレモ音楽祭の新曲を聴きながら、司会者の出
来や、アシスタントの女性のファッション、また、”お笑い”などの話題で賑
います。私も、毎年、楽しみにしています。

もともと、イタリアのポピュラー音楽状況は、日本のそれとは違っていました。
結構年配のおじさんたちが人気だったりするのです。
イタリアの音楽は、世代によるジャンルの違いがあまりないともいえるでしょ
うか。すばらしい曲を書き続けている人が多くいます。
そして、古くても良い歌であれば、いつまでも廃れずに、年齢の違いを超えて
愛され続けています。そのことに私は大いに共感をもってきました。

それでも、やはりここ数年は、タレントスカウト番組で優勝した若者が、商業
ベースに乗って売り出されて人気を集め、サンレモでも勝利してきたのです。
じっくり歌作りをしていこうという年配者たちには、サンレモへの参加はあっ
ても、優勝するということは、最近はありませんでした。

ところが今回、そんな最近の風潮をくつがえすようなことが起こったのです。

作家の野坂昭如氏を上品にした感じのおじさん。
ロベルト・ベッキオーニ氏、67歳。
高校の文学の先生でもあり、45年間の音楽生活。
サンレモ参加も、37年ぶり。
彼の歌が、優勝することが出来たのです。

彼の歌は、歌詞も聴き取りにくくて、最初は意味がよく分かりませんでした。
にもかかわらず、その表情から、心から人を愛し、音楽を愛する人であること
が深く感じられます。
そのさわやかな笑顔や振る舞いから、曲のすばらしさが見事に伝わってきま
した。私も、その表情に一挙に魅せられてしまいました。

今回の彼の優勝は、イタリアの心を保とうとする、今の大人たちの譲れない思いが表
現されたもののように思えて仕方がありません。
日々失われていく良心や愛、また感性を大切にする心が、物質社会によって
どんどん砂漠化していく風潮に勝利したと言えるでしょう。

以下は、彼の曲の歌詞です。

愛の人、と呼びかけて欲しい、もう一度

詩人は歌を忘れ、職人は仕事を失う
すべての若者は一冊の本を守るために広場で叫ぶ
なぜなら、自由な発想が抹殺されかけているから
愚か者が日の目を見、意気地なしが本心を隠すいま
こんな許せない闇夜は終わらせよう。
今こそ、メロディーと言葉によって満たすのだ

思いは蝶のように自由に飛び
星のように、嵐によって消えることもない
書き続けよう、沈黙と稲妻の間の人生を
一人一人の人間性を守るために

愛の人、と呼びかけて欲しい、もう一度
愛の人、と呼びかけて欲しい、いつでも

だって私たちは、愛そのものだから       (大意)
文・絵/三浦絹子(ローマ在住)

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